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2020/02/03開催
第8回教養教育センター講座「人類学から「安全保障」へ―学問とは何か、あらためて考えてみようー」

令和元年度第8回教養教育センター講座
「人類学から「人間の安全保障」へ-学問とは何か、あらためて考えてみよう-」を開催

 令和2年2月3日(月)、甲府キャンパスY-15教室において、東京大学名誉教授(本学スペイン語科目非常勤講師)の木村秀雄先生をお招きし、「人類学から「人間の安全保障」へ-学問とは何か、あらためて考えてみよう-」と題した講演会を第8回教養教育センター講座として開催しました。
 講演会の趣旨は副題の通り、学期末を迎えた学生の皆さんに「学問とは何か」を、改めて考えてもらう、というもので、そのために、人類学を専門とし南米先住民の神話について研究をされていた木村先生が、どのような経緯で東大で「人間の安全保障」プログラムを立ち上げ、どのように「人間の安全保障」という、一見人類学とはかけ離れた、新しい学問分野に取り組んでこられたのかを、お話しして頂きました。なお「人間の安全保障」とは、一般に言われる「安全保障」は国を単位とするが、実際には人々にとっての危機は国境を越えるものであり、国が安全でも人々の安全に直接はつながらない、という問題意識から、「平和・開発・人権」の切り離せない三つの分野にまたがり、人々が「三つの自由(恐怖と欠乏からの自由+尊厳を持って生きる自由)」を持てるように、人々を保護しかつ「エンパワーメント」する、というという思想です。
 木村先生によれば、先生がこの分野に足を踏み入れたのは「全く偶然」でした。かつて先生は青年海外協力隊員として現地に赴き、その後も後輩隊員の研修を担当されていたこと、そして東大で学際大学院のコースを作ることになり、プログラムを考えるメンバーに選ばれ、結果としてそれが「人間の安全保障プログラム」に落ち着いた、という二つの偶然です。そうはいっても、この二つの分野には「現場にいることで課題を発見し、それについて当事者の立場から(実際にはそれは不可能なので、厳密に言えば「その立場に立とうとしながら」)考えていく」という意味では共通していて、その意味で、見た目の違いとはうらはらに、先生にとっては「性に合う」研究分野だったそうです。
 お話の最後には、梨大の学生の皆さんに、いろいろなアドバイスを下さいました。「自分探しなんてやめよう」(自分のことなんてわからないのが当たり前だし、周囲から切り離された自分なんてないだから)、「(一生懸命ではなく)一所懸命にやろう」(目の前にある、その場でやるべきことをしっかりやっていれば、道が、世界が開けることもある)、「ともかく好きにやってみよう(自分をあまり追い込まないで)」という先生の言葉は、学期末の忙しい中、参加してくれた学生の皆さんの心に響いたことでしょう。実際受講者の感想の中には、「大学での一年間が終わる時期に、モチベーションの上がる話が聞けて個人的にはとてもいい時間となった。大学生のうちにしかできないことや、挑戦し続けることなどこれから先に活かしていきたい。」「知識や考え方が自分の中で広がっていくような感覚が好きなので、まさにその感覚がたくさんもらえました。」といった声が聞かれました。
 これ以外にも、スペイン語の非常勤講師として本学に来て下さっていたこと、そしてアマゾンやアンデスの先住民言語にも通じていらっしゃることもあって、外国語を学習することの重要性についてお話をしてくださり、梨大には授業がない人類学という学問について解説して下さるなど、内容は盛りだくさんでした。木村先生はこの3月で本学の非常勤講師をおやめになりますが、講師として来て下さった4年間の締めくくりにふさわしい、素晴らしい講演会となりました。

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