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寺田 雄介 准教授

寺田 雄介

私の専門は近現代のドイツ文学で,なかでもフランツ・カフカの作品を研究対象としています。『変身』という小説を読んだことはありますか? 主人公のグレーゴル・ザムザがある朝目を覚ましたら,ベッドの上で甲虫になっていた,というお話です。しかし,どうしてこんな姿になったのか,何をしたら元に戻れるのか,一切の謎解きがされないままに,物語は淡々と進んでいきます。そんなカフカの文学作品を,「病」や「医術」の文化史との関係から研究しています。

病が人類に,そして人類の文化に与える影響は甚大です。COVID-19の襲来により,これまで多くの人が明るい未来と信じてきたグローバリゼーションにも影が差し,世界のいたるところでローカライゼーションが進みました。海外旅行はおろか,大学にも職場にも行けず,都道府県をまたぐ移動も思うままにできない時期も続きました。そして,濃厚接触,3密,ソーシャル・ディスタンス,緊急事態宣言,自粛警察などの,これまでにはディストピア小説の中でしか見られなかったような奇異な表現が,身の回りに溢れるようになりました。似たような現象は,実は人類の歴史上で何度も繰り返されてきたのです。ペスト,天然痘,コレラ,結核,インフルエンザ,エイズ・・・世界を席巻したこれらの病は,人類の文化を変容させ,文学作品の中にその刻印を残しています。

文学への様々なアプローチの仕方を学ぶことで,みなさんが興味をお持ちの分野を,複層的な視点で捉え直し,新たな発見にまで結びつけるお手伝いをしたいと考えています。また,本学では主にドイツ語の授業を担当しており,母語以外の言語を効果的に修得する方法についても,強い情熱を持って取り組んでいます。

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